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和佐隆弘の論文など - Opinions of Takahiro WASA -


by wasatakahiro

文明史からみた”経済国家の破産” ③世界最大の債権国が財政難―資源最悪配分

経済運営の結果として、国民経済の姿として一方における膨大な債務残高(国・地方の財政赤字の累積)と他方における世界最大の債権大国(対外純資産残高)がある。そして自由な取引の中で決る価格の動きとして、一方における大幅な株安、地価安と、他方における円高である。その中で、家計や企業、金融機関、政府機関は内外で膨大な不良債権を抱えている。

 この現実は、いったい何を意味しているのだろうか。不健全きわまりない。矛盾だらけである―といっても、説明したことにならない。こんなはずではなかったのではないか。全く人知をもってしては不可抗力な天災だったとでもいうのか。そんなことはありえな
いわけで、われわれ日本民族がつくっている国家の意思による選択の結果以外の何ものでもないのである。

 そういう前提に立たなければいけないといいたいのである。そうしないと、解決策を考えることはできないからである。日本という国は、近代国家でなくてもいいなどという人はいないだろう。主権在民の法治国家である。私有財産を憲法によって保障しており、株式会社を中心とする私企業の経営による自由な競争社会ではないのか。そして、その制度や法律を決める国権の最高機関を構成する政治家は、有権者である国民が自由な選挙で選んでいる。国会は多数決という民主政治のルールで運営されているのである。

 世界最大の債権国が、国家経営の根幹ともいえる財政で危機に直面している―ということが象徴しているように、市場経済における資源配分に問題があったのである。期待されている最適配分に機能しなかったばかりか、むしろ資源最悪配分になったと断じるほかない。まさに、アダム・スミスの言う正義の法を無視した場合の”見えざる神の手”の仕わざである。

(④以降につづく)

1997年4月,日本及日本人(平成9年陽春号)
by wasatakahiro | 2009-03-03 15:02 | 既発表のもの