和佐隆弘の論文など - Opinions of Takahiro WASA -


by wasatakahiro

文明史からみた”経済国家の破産⑦ 近代国家の誕生とホップスの『リヴァイアサン』

コペルニクスの『回転について』からほぼ一世紀を経て、ガリレオ・ガリレイとデカルトがほぼ時を同じくして地動説を確信していた。ガリレオの『天文対話』は出版の翌年、一六三三年に異端審問の裁判にかけられた。十六世紀末から十七世紀中葉にかけてのヨーロッパ動乱の時代を生きたホップスが近代国家像の基礎を築いたのは歴史の必然である。ホップスは記している。「技術はさらにすすんで、自然の理性的でもっともすぐれた作品である、人間を模倣する。すなわち、技術によって、コモンウェルスあるいは国家とよばれるあの偉大なリヴァイアサンが、創造されるのであり、それは人工的人間にほかならない」と。その序文の書き出しに、クーンのいう新パラダイムの旗手として
のホップスが読みとれる。すなわち「自然(神がそれによってこの世界をつくったし、それによってこの世界を統括している、その技術)は、・・・」と。神と世界と世界秩序とをひっくるめた自然観である。科学の対象となりうる政治体としての近代国家像を提示した。彼はそれを四つに分けて考察する。
 「第一に、それの素材と製作者、それらはともに人間である」
 「第二に、どのようにして、どういう諸信約によって、それはつくられるか、主権者の諸権利および正当な権力あるいは権威とは 何か、そして、何がそれを維持し、解体するか」
 「第三に、キリスト教的コモンウェルスとは何か」
 「さいごに、暗黒の王国とは何か」
 こうしてホッブスは、国家を人間によって人間のために創造されたものと確認したうえで、それをリヴァイアサン、つまり人工的人間と規定する。そして、この人工的人間がなぜ権力を持たねばならぬか、その正当性なり必要性の証明を国家の責任に帰した。つまり、社会科学における「挙証責任の転換」という学問方法論の確立に決定的な役割を果たしたのである。

⑧以下に続く
pp.87-97, 日本及日本人(平成9年陽春号), 1997年4月
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by wasatakahiro | 2009-04-06 20:13 | 既発表のもの