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和佐隆弘の論文など - Opinions of Takahiro WASA -


by wasatakahiro

文明史からみた”経済国家の破産⑧ 市場経済の鏡・アメリカの独立宣言

経済国家・日本の政治を考えるうえで、すぐ思い浮かぶのはアダム・スミスの『国富論』であ右。それとともに、どうしても見落としてはならないのは、同じ一七七六年に発せられたアメリカの独立宣言である。ホップスの『リヴァイアサン』(一六五一
年)から百二十五年後のことだった。

現代の日本を文明史の視座から検討するうえで、アメリカは少なくとも三重の意味で重要である。一つはいうまでもなく冷戦に勝利した西側世界の主役だからである。社会主義計画経済に勝利した民主主義市場経済の体制が世界システムと
して支配的になっている以上、経済のグローバル化の前提といってもいい。

1997年4月,日本及日本人(平成9年陽春号)



もう一つは、戦後の日本再建がアメリカの占領政策の下に進められたという歴史的な事実による。

この事実は改めて指摘するまでもないが、その事実が持つ意味は米ソ対立という状況が変わって十年近くになろうとしている今こそ、総点検が必要なのではなかろうか。本稿のテーマである経済問題が、金融システムという市場システムの心臓部に迫ってきただけに、いささかの見落としも許されないからである。

 三つ目は、日米の国柄に対照的な要素が強いだけに、二十一世紀に向けての日本の国‘つくりに大きなヒントが得られるのではないかということである。特に、アメリカは建国から二百二十年余しか経っておらず、それも本国のイギリスと戦争することによって勝ち取った、いわば”人工国家”の要素が強い。ホップス流のリヴァイアサンという近代国家のモデルともいえる。歴史と伝統を誇る日本の、近代国家としての姿を映す鏡として、大いに参考になるはずである。

 『独立宣言』を読み直してみなければならない。まず、人はすべて平等だ、という。そして生命、自由、及び幸福追求の権利を与えられている。それは何人も譲り渡すことのできない権利である。こうした権利を守り、強化するために政府がある。もし、政府
がこの義務を怠ったら、国民はそれを廃止することができる―といったところである。これらをひっくるめて、”自明の理”だという。

(⑨以降につづく)
1997年4月,日本及日本人(平成9年陽春号)
by wasatakahiro | 2009-08-19 20:21 | 既発表のもの